① 生徒指導とは

本来、生徒指導とは、上図に示すように、子どもたちの中に自己指導能力を育て、子ども一人ひとりなりに自己実現を図る営みが生徒指導です。言わば教育の目的である人格の完成を自分自身によってできるようにすることが、生徒指導の目的です。

 自分の中に居る「もう一人の自分」と現実の自分を向き合わせ自分自身で現実の自分を指導できる力、いわゆる自己指導能力を育てることが生徒指導なのです。

 生徒指導の場面は、各教科の学習指導や道徳、特別活動等の教育課程に位置付いている時間はもとより、クラブ・部活動や日常の生活場面も全て含まれます。当然、問題行動等への指導場面も自己指導能力を育てる上では大切な指導場面の一つです。

 指導においては、生徒指導の3つの留意点と言われる「自己存在感を味あわせる」「自己決定・選択をさせる」「共感的な理解を育ませる」を指導の視点として留意しなければなりません。生徒指導に関わる大人は家族はもちろん、学校の担任や部活の教職員をはじめ地域の方やメディアも含め様々な大人となります。

 生徒指導を考える上で理解しておかなければならないことは、子ども一人ひとりと集団との関わりです。アメリカの心理学者アブハム・マズローは人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低い階層の欲求が満たされると高次の階層の欲求を欲すると提唱しました。

 第1段階の生理的欲求及び第2段階の安全の欲求においても、学校は関わりを持つと考えられますが。いじめ等で生活の安全が脅かされる状況では、学習や行事への参加など考えることすらできなくなり、学校への登校自体が厳しいということになります。

安全の欲求が満たされると次は集団の中での所属感や居場所を求めることになります。そこで、学級経営や学年・学校の集団づくりが大きく関わってくるのです。端的に言えば、所属している集団がここちよい集団であることが、居場所でありその居場所で所属感を味わうことができるのです。

第3段階が満たされると学習への意欲や集団活動への積極的な態度が生まれてきます。学級での係活動や部活動など集団との関わりの中で「自分はみんなのために役立っているんだ」「自分は仲間にとって価値のある人間だ」などと認められたり、賞賛を得ると自己存在感や自尊感情が高まったりします。その状況を「もう一人の自分」から認識させ、自分で自分をコントロールできるよう支援することが第3・4段階での生徒指導なのです。

服装や頭髪の乱れなどの生活面での指導もこの段階での生徒指導の1つの場面ではありますが、ルールを守らせること、謝罪をさせることが第一の目的ではありません。問題行動への指導を通して、自己指導能力を付けさせることが大切です。

 第4の段階は、自己実現に向け自分自身の内なる力で課題を解決していくことができるよう、支援することになります。

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