不登校は問題行動ではないということを法律や通知文、学習指導要領で示していると前回まで述べてきました。しかし、問題行動ではないと示した平成28年の調査研究協力者会議の報告以後、文部科学省は「不登校は生徒指導上の喫緊の課題である」と通知文や会議等で必ずといっていいほど、言い続けているのです。
では、生徒指導上の喫緊の課題とはどういうことでしょうか?
まず、「生徒指導とは」について考えてみましょう。令和4年12月に生徒指導のバイブルともいわれる「生徒指導提要」が12年ぶりに改定されました。その中で、
◯生徒指導の定義は
生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課題に対応するために必要に応じて指導や援助を行う。
◯生徒指導の目的は
生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支えることを目的とする。
と示した後、目的を達成するためには、児童生徒一人一人が自己指導能力を身に付けることが重要です。と記述されています。
以上を要約すると、生徒指導は子どもたちが自己実現(幸福追求)ができるように、子どもたち自身が自己指導能力を自ら身に付けることができるよう支援することと言えます。
この自己指導能力を身につけるためには、多様な他者との関わり合いや学び合いの経験が必要なのです。集団の中で学ぶこと、生きること、働くことなどの価値や課題を見いだしていくことが重要なのです。つまり、不登校によって、この経験ができにくい状況は、自己指導能力を身に付けることに課題がある(リスクがある)ということなのです。
文部科学省は学校以外での教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール、自宅でのオンラインで、学ぶ場所と機会を確保するよう示してきていましたが、令和5年10月17日の通知文で「学校での学びは重要ですよ」と改めて学校等に通知しています。
このことに関連して国や市町は「学びの多様化学校」という名称で、不登校の子どもたちが通いやすい、不登校の子どもたちにできるだけ合わせるような教育課程を編成できる学校を新たに設置するよう努めています。
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