今回から数回に分けて「いじめの未然防止」について述べていきます。
いじめの未然防止には次の7つの視点(取り組み)があると思います。
ア 自己指導能力の育成
イ わかる・できる授業づくり
ウ 「居場所づくり」と「絆づくり」
ヱ 人権意識の高揚と規範意識の醸成
オ 他者と協働する態度の育成
ヵ いじめの未然防止教育の実施
キ゚ SOSの出し方に関する教育の推進
今回はアの自己指導能力の育成について述べます。
ア 自己指導能力の育成
自己指導能力と、自分の中にいる「もう一人の自分」が「現実の自分」をコントロールする力と考えるとわかりやすいと思います。
現実の自分がもう一人の自分に「気づき」もう一人の自分から現実の自分を「見つめ」そして、お互いに「育てあう」ことで、自己指導能力は育ちます。
令和4年に改定された生徒指導提要では、「生徒指導の目的を達成するためには、児童生徒一人一人が自己指導能力を身に付けることが重要です。」(p13)と述べたあと、自己指導能力の獲得を支える生徒指導の実践上の視点として次の4視点を示しています。
視点1 自己存在感の感受
「自分も一人の人間として大切にされている」という自己存在感を実感することが大切です。また、ありのままの自分を肯定的に捉える「自己肯定感」や他人のために役に立ったとか認められたという有用感を育むことも大切です。具体的には自分の作品(書道、絵画、俳句など)が掲示されているとか、授業中に「◯◯さんの意見が今日の学習を深めてくれましたね」や、係活動で◯◯係として学級の役に立っていることを帰りの会で認める活動を行うなどで自己存在感を高めることができます。
視点2 共感的な人間関係の育成
そもそもほとんどの公立学校の学級は、自分で選択できない出会いから始まります。その生活集団を認め合い、支え合い、育ち合う集団に変えていくことが学級経営です。間違いや失敗を笑わない、どうしたらできるようになるのかみんなで考える支持的な集団が、いじめを産まない集団づくりの基盤となります。
視点3 自己決定の場の提供
自己指導能力を育むためには、自分の決めたことに責任を持たせることが重要です。授業においても自分の考えや意見を持つことから学習をスタートさせ、課題解決の方法を選択したり、発表の工夫をしたりなど、学習指導要領が示す「主体的・対話的で深い学び」を目指すことが大切です。
視点4 安全・安心な風土の醸成
安心して授業や学校生活が送れる風土を子どもたち自身が創り上げるように学級経営を行うことが大切です。子どもたちが落ち着いて自分の活動を決めたり、活動を振り返ったりしながら「もう一人の自分」を育てるためには、必要なことです。他人の人格や人権をおとしめる言動、いじめはもちろん暴力行為などは絶対に許されません。
*参考「生徒指導とは」
生徒指導とは、学校においては各教科の学習指導をはじめ、部活動や体験活動など全ての教育活動の中に生徒指導の4視点を機能化させ児童生徒が自ら「自己指導能力」を獲得することを目指します。
その中には、問題行動や不登校などの指導ももちろん生徒指導の指導場面の一部です。
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