学校の危機管理 第2回 安全配慮義務と授業

教師の安全配慮義務と授業
 法で規定されているように、子どもたちは安全に安心して教育を受ける権利を有しており、と同時に子どもたちは教師の指示に従い強制的に授業を受けています。そこで、学校は授業中や学校行事など学校の管理下において、高度の「安全配慮義務」を負うことになります。

過去の学校事故、例えば理科の授業中バーナーでやけどをしたとか、体育の授業において跳び箱で骨折したなど、様々な案件が発生し、中には裁判まで発展しているケースは少なくありません。そこで、問われるのは次の4点が裁判の争点になっていることが多いです。

 ア 計画段階:事前の授業計画はどうだったか
 イ 準備段階:実施に至るまでの準備段階での措置は
 ウ 指導段階:授業中の指導段階での措置は
 エ 事故発生後:事故が発生した直後からの措置は

 

 上の4観点については、学校の危機管理の重要な視点として捉え、日頃から教職員への指導と定期的な研修を行い、子どもと教職員を守るよう努めておくべきです。
 ア 計画段階
 ここで問われるのは、行きあたりばったりの授業ではなく、きちんと年間や学期の指導計画や単元の指導計画に則った予定の授業であったのかどうかがポイントです。そのためには、年間指導計画はもちろん、週の計画案や月単位での計画できちんと管理しておくことが重要です。

 イ 準備段階
 ここでは、子どもの作業や実習、実験などを伴う場合や教師が子どもの前で実験などを提示するときに怪我などをしないように、前もって試行実験や試しの実習を行っていたかが問われます。例えば理科の実験でガスバーナーを使って危険な液体を温めるといった場合や、体育の実技で跳び箱の活動を行うときなどです。子どもが実験を行う場合は当然ですが、師範実験の場合もあらかじめ試行実験を行う必要があると思います。

 ウ 指導段階
 授業中においては、子どもたちが教師の指示に従って安全に実験や体験を行っていたかが問われます。そのためには落ち着いた雰囲気の中で整然と学習が進められていたかなどの学習規律の指導や、子どもたちが実験や体験の仕方をしっかり理解して行うための手順の提示、などの配慮があったのかも問われることになります。

 エ 事故発生後
 事故が発生した直後からの対応については、まず119番通報や病院への搬送など怪我をした子どもへの速やかな対応がなされたのか?
 次に、管理職への報告が速やかになされ、保護者への連絡など報告の状況が問われます。また、事故後も含めて指導の記録も整備しておく必要があります。もちろん週の計画案や月の計画案と同一のもので構いません。
 また、危機管理に関する職員研修の実施や管理職の授業訪問による日常的な指導などが大切でです。
 重要なことは、ア~ウの観点は授業での危機管理上の話ですが、週の計画案や危険を伴う実験等での試行実験、あるいは学習規律や学び方の指導など、学力の向上に組織的に取り組む上では欠かせないことばかりです。
 つまり、普段から学力の向上に向け、真摯に取り組んでいることが学習指導のリスクマネジメントを行っているということです。

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