学校の危機管理 第10回 想定問答集の作成

 前回(9回)で事故や不祥事などが発生した場合のダメージコントロールの考え方について述べました。その際、ポジションペーパー(事案の概要と現状、再発防止策について共通理解するための文書)について記しましたが、次に作成しなければならないのが「想定問答集」いわゆる「Q&A」です。想定問答集作成の役割は2つあります。1つは対外的(マスコミ、保護者等)にブレない情報を発信するためのものです。もう1つは組織内の全員が共通理解をするための手段としての役割です。
今回は学校事故や不祥事などの事案発生時の想定問答集の作成について記します。

1 想定問答集(Q&A)の内容
(1) 事案の事実に関わること
 ア 発生の原因 イ 発生の背景 ウ 経過 ヱ 被害の規模(直接、間接)
(2) 現在の対策(現状)

(3) 再発防止策、今後の見通し
(4) 責任表明(謝罪、責任のとり方)

 内容については一般的に上記4項目になりますが、事案によっては追加する項目が必要になります。
どの内容についても事実に基づくことが原則です。たぶん◯◯だろうとか、きっとこうなるだろうなどの曖昧な内容は厳禁です。特に、発生の原因が学校にある場合や、被害の規模が児童生徒に大きく関わる場合など、保守の気持ちが働きますが、冷静に事実を見つめてQ&Aを作成することが重要です。
 事実に基づかない内容や希望的憶測は2次被害の原因になったりします。 
人は起こした事件・事故を非難される以上に、どう対応したかを非難されます」

2 作成の方法
  (1) 数名で問を上げる(世間が聞きたいことは何か)
  (2) 上記 1 の内容ごとに整理する。
  (3) 必要十分で加除修正し、回答を作成する。
  (4) 対策本部で検討し、最終的に本部長(校長)が決済する。

具体的には関係者数名で、Excelを用いて各自が問を列挙します。世間が聞きたいことは何なのかを念頭に問を上げていきます。その後担当者が集約し、問を分類し、取捨選択をしながら問(Q)を精選していきます。その後、事案について最も理解している者一人が回答(A)を作成し、対策本部のメンバーで回答(A)を検討します。最終的には校長が朱を入れ完成させるのが一般的です。最近では、この作業を市町の学校教育担当部署の指導主事などが担う場合も多いです。重要なことは、スピードと的確性です。とにかく早く急ぎます。そして事実に基づき正確に作成します。あとあと実はこれは違っていましたは許されません。

実際の例で示します、体育の時間に運動場で活動中、熱中症で10名程度の生徒が救急搬送される事案が発生したとしましょう 

ア 事案発生の原因」についての例
Q1子どもたちが熱中症になった原因は?
A1 気温の急激な上昇により子どもたちの体温が上昇し発汗が多くなったことによると考えられ  る。
Q2 暑さ指数の計測は行っていたのか?
A1 毎日、始業前、11時、15時と3回計測し、教育活動の実施を決めている。
Q3 計測しているにも関わらず、なぜ発生したと思われるか?
A3 当日の気温の変化は・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

このように、問を先に上げ、整理し回答を作成します。この作業は相当なスピードが求められます。想定問答集の作成はダメージコントロールの成否を左右すると言っても過言ではありません。

 

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