学校の危機管理 第11回 クレームを減らす最大の方法!

 これまで、児童生徒・教職員・学校を守るためのリスクマネジメントの基本的な内容について述べてきました。現在の学校においては、いじめ問題・学校事故・教職員の不祥事・不登校そして学力についても評価の対象となり、ある意味リスクと考えていいと思います。そのようなリスクをコントロールし、事案発生後のダメージコントロールを適切にしなければなりません。いい加減なことでは学校は崩壊しかねません。学校のリスクマネジメントにおいて、私が最も重要だと考えているのは「真摯さ」だと思っています。

 事件・事故は組織を機能化させ、評価・点検などやるべきことを行っていればリスクは最小限にとどまらせると思います。それでも事案は発生するものです。そのようなとき最も影響を及ぼすのが「保護者や地域との関わり」だと思います。日頃から保護者や地域からの信頼を得ておくことが重要です。

2:6:2の法則
 この法則は一般的には組織の人材の比率について、優秀で素晴らしい能力を発揮する人たちが2割、普通の能力を発揮する人たちが6割、あまり能力を発揮しない人たちが2割になるという法則です。
 経験則ですが、保護者の比率も学校が何を行っても、間違っても応援してくれる人たちが2割、言い方はわるいですがあまり関心がない人達が6割、そして学校がどんなに素晴らしいことを行っても批判的に捉える方たちが2割の比率になっているのではないかということです。少し乱暴な捉え方かもしれませんが、皆さんの学校ではどうでしょうか?

 さて、この比率は、常に応援の2常に批判の2は変わらないと思います。状況に応じて変わるのはあまり関心のないの方たちだと思います。ではその方たちを応援に変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それは実は簡単なことです。
 次の2つのことを意識して保護者や地域と接するだけのことです。


1つは「さわやかな応接」です。
 例えば電話の応対でぶっきらぼうに「はーい、◯◯学校です」と対応するのか、明るく元気に「はい!◯◯学校、◯◯学年の、◯◯です」と所属と氏名を明かしてさわやかに応対するのでは相手が受ける印象は何倍も違うと思います。電話だけでなく日常の保護者や地域の方との応接についても同様です。そんなこと当たり前ですよとおっしゃるかもしれません。重要なことは学校として組織的に行っているかどうかです。このサイトのカテゴリー「うさぎはなぜ負けた」の中で示していますが「0と1の差」は決して1ではありません。

2つ目は「真摯さ」です。
 この「真摯さ」はマネジメントの父と言われているピーター・F・ドラッガーのマネジメントの中核をなすものだと思っています。学校経営・運営においても真摯さは欠かすことのできないことです。
 この真摯さは仕事に関しての誠実さ真面目・責任感と、人間として同僚への心くばりや子どもたちへの愛情の2つの側面があると思っています。


 

 上の図Aは「さわやかな応接」と「真摯な姿勢」で教職員が対応できていると、児童生徒や保護者の信頼や安心が蓄積される学校になり、ちょっとした問題となる事案が発生しても「お尋ね・相談」で終わることが多くなり、真摯に対応すればさらに信頼や安心が高まり、プラスのスパイラルとなって学校は更に向上するという図です。

 一方、下の図Bは真逆の学校です。ゆるい雰囲気やふさわしくない服装や失礼な態度で応接する職員がいたりする真摯さが欠如している学校では、疑問や不満が蓄積していき、引き金となる事案が発生すると、お尋ねとかではなく直ぐにクレームや苦情となって学校にダメージを与えます。


 例えば、実際にあった例ですが、通知表の評価で2人の生徒XとYがある教科でXは5、Yは4でした。ところが、ペーパーテストの合計点数ではXの方がわずかに低かったのです。Yの保護者は「これはおかしいのでは、うちの子(Y)の方がテストの点数が高いのになぜ通知表は低いのですか?」と問い合わせがありました。担任は丁寧に評価の対象となる具体的な資料(定期テスト、提出物、授業中の交流活動への参加具合、等)と評価の観点と評価の方法について説明し、納得していただきました。
 これと同様のことがいわゆるゆるい学校でも起きたのです。結果は言うまでもなく、いきなり校長にクレームの電話が入り、なんとか落ち着いたものの、全く関係ない他の案件も引き出して苦情として文句を言われたそうです。

 事件・事案が発生したときに、前出の6割の保護者や地域の方を応援に変わらせ、8:2でダメージコントロールを行うためには、日頃からさわやかな応接と真摯な対応を行うことだと思います。

 危機管理のリスクマネジメントにおいて、組織を整え定期的な点検や改善を行うことは大切なことですが、最も重要なのは「さわやかな応接と真摯さ」だと思います。

 

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